歯を失った際の治療法の一つとして、インプラント治療を選ぶ人が増加しています。インプラントは、入れ歯やブリッジでは得られにくい自然な噛み心地が特徴です。しかし、インプラントの噛み合わせが悪いと、しっかり噛むことができなくなったり、インプラントが破損したり、最悪の場合には抜け落ちてしまうこともあります。自分の歯と同様の機能を果たすためには、インプラント治療においても適切な噛み合わせの調整が不可欠です。
インプラント治療直後は正しい噛み合わせが保たれていても、時間が経過するにつれてずれてくることがあります。特に、前歯や片側だけで噛んで食事をする癖がある人や、噛みしめる力が強い人は、奥歯に負担がかかり、徐々に噛み合わせのバランスが崩れてしまうことがあります。
噛み合わせの問題は部分的な診察や治療だけでは改善が難しいため、全体の噛み合わせを診る必要があります。そのために、写真やレントゲンを撮影し、咬合器を使用して噛み合わせを再現しながら診察を行います。噛み合わせのバランスを確認し、インプラントの被せ物や虫歯の補綴がずれている場合は、正常な状態に戻すために歯を削ったり、被せ物を調整する治療を行います。
また、強い噛み癖や食いしばりがある場合には、マウスガードを作製し、歯への負担を軽減しつつズレを修正していきます。さらに、重度の不正咬合や全体の噛み合わせを治療したい場合には、矯正歯科治療や部分的な矯正治療が効果的な選択肢となることもあります。
噛み合わせの症状に応じて治療方法は異なりますが、一般的には痛みを伴う治療ではありません。無意識に行っている癖や生活習慣を改善し、噛み合わせの高さを調整しながら、定期的に通院して治療を進めていきます。
噛み合わせが悪くても、食事や会話に直接的な影響がないように感じるかもしれませんが、実際には噛み合わせは非常に重要です。では、なぜ正しい噛み合わせが大切なのかを見ていきましょう。
歯を失ったままにしておくと、徐々に歯並びが崩れてしまいます。歯並びが悪くなると、見た目の問題だけでなく、口腔内のトラブルにもつながります。また、バランスが崩れた状態を放置すると、全身にも影響が出てくることがあります。
具体的には、虫歯や歯周病の原因となり、歯の寿命を短くすることがあります。さらに、口腔内の問題だけでなく、顎関節症や肩こり、頭痛、腰痛などの原因にもなり得ます。十分に噛めないことが胃腸への負担を増やし、認知症のリスクが高まるとも言われています。
噛み合わせが悪いと、インプラントに過剰な力がかかり、揺れ動いてインプラント周囲炎を引き起こしやすくなります。また、噛み合わせの悪い部分があると、歯磨きをしても磨き残しが生じやすく、唾液が行き届きにくくなるため、虫歯になりやすくなることもあります。
顎関節症の原因は複数の要因が組み合わさることで、口が開きにくくなったり、口を開ける際に痛みが生じたり、音が鳴ったりする症状が現れます。噛み合わせが正しくないと、顎の筋肉に負担がかかり、顎の位置がずれるため、顎関節症を引き起こしやすくなります。
「噛み合わせが悪いということは、特定の歯に力が集中し、過剰な負荷がかかっていることを意味します。その結果、歯の表面がすり減ったり、歯がぐらついてインプラント周囲炎を引き起こしやすくなり、最終的には歯の寿命が短くなってしまいます。
噛み合わせが悪いと、噛んだ時に痛みが生じることがあります。特に奥歯は食事の際によく使われるため、痛みが続くと食事を楽しむことができなくなります。そのため、早めに治療を受けることが大切です。
インプラント治療を受けた際には正しい噛み合わせが保たれていても、年月が経つにつれて噛み合わせがずれてくることがあります。インプラントを正しい噛み合わせのまま使用するためには、どのような対策を講じればよいのでしょうか?
インプラント治療後の定期的なメンテナンスは、インプラントの不具合やインプラント周囲炎を予防するために非常に重要です。このメンテナンスの際に、噛み合わせの調整も行うことができます。
天然の歯の場合、強い力がかかっても歯根膜が衝撃を吸収するため、噛み合わせが多少強くても動く余地があり、力を分散させる役割を果たします。一方、インプラントには歯根膜がないため、強い力が直接伝わりやすく、インプラントの不具合を引き起こす可能性があります。上部構造の噛み合わせを調整する際には、審美性だけでなく、口腔内全体の噛み合わせのバランスも重要です。
さらに、食いしばりや歯ぎしりといった癖がある方は、意識的に歯を食いしばらないよう心がけるか、マウスガードを作成することをおすすめします。
インプラント治療後の定期検診では、歯と歯の関係だけでなく、顎の位置や骨格、筋肉のバランスなども考慮されます。これにより、治療したインプラントを守るだけでなく、周囲の健康な歯を保護することにもつながります。
自分の噛み合わせが正しいかどうかは、日常の習慣や慣れから判断しづらいことがあります。以下のような症状が現れていないか、確認してみましょう。また、虫歯や歯周病を予防するためにも、定期的に歯科医院で検診を受け、その際に噛み合わせの診断も行ってもらいましょう。
まずは上下の前歯の噛み合わせが正しいか確認しましょう。ここが合っていない場合、全体的にずれている可能性があります。また、左右の噛み合わせがずれていないかもチェックしてみましょう。
正しい噛み合わせは、上の歯がわずかに外側に出ている状態です。上の歯が過剰に前に出ている出っ歯や、下の歯が外側に出ている受け口は、噛み合わせが悪い状態ですので、治療を検討した方が良いでしょう。
上の歯が約2ミリほど被さっているのが正常な状態です。上下の噛み合わせに隙間ができていたり、2ミリ以上深く噛み合っている場合は、噛み合わせが悪いと考えられます。
噛んだときに痛みを感じたり、食べ物がうまく噛めない部分がある場合は、噛み合わせが正しくない状態です。また、顔の筋肉の付き方に違和感を覚えたり、頬をよく噛んでしまうことがある場合も、噛み合わせの問題が考えられます。