COLUMNコラム

あなたは大丈夫?歯周病の症状と対処法について知っておこう

歯のトラブルの原因として虫歯が多いと考えられがちですが、実際には歯を失う最も一般的な原因は歯周病です。

歯周病は40代になると約3人に2人がかかる身近な病気です。歯周病の厄介な点は、自覚症状が少なく、気づいた時にはすでに進行していることが多いことです。今回は歯周病の進行とその症状、検査方法について詳しくご紹介しますので、自分の口の状況を確認してみてください。

歯周病の検査方法

ポケット検査

歯周病の進行に伴い、歯と歯肉の間にある歯周ポケットが深化します。健康な状態では約2mmであるポケットが、病状の悪化により3mm以上に拡大し、同時に歯槽骨の吸収が進行します。

歯周病の診断と進行度の評価には、プローブと呼ばれる専用器具を用いて歯周ポケットの深さを測定します。この検査では、ポケットの深さだけでなく、炎症の程度を示す出血の有無も重要な指標となります。プロービング時の出血は、活動性の炎症を示唆し、治療の必要性や効果を判断する上で貴重な情報となります。定期的な検査により、歯周病の進行状況を正確に把握し、適切な治療計画を立てることが可能になります。

レントゲンによる審査・診断

顎骨の状態を正確に評価するには、レントゲン撮影が不可欠です。レントゲン撮影では肉眼では見えない骨構造を詳細に観察することが可能となります。歯周病の進行度を示す骨吸収の程度を明確に表示し、同時に骨密度の情報も提供します。高密度の骨組織は画像上で白く表示され、一方で低密度の領域は黒く描出されます。

動揺度の検査

歯の動揺度は、歯科用ピンセットを用いて行われます。

健康な歯でも生理的な微小な動きは存在しますが、歯周病の進行に伴い歯槽骨の吸収が進むと、歯の動揺が顕著になります。

動揺の進行度確認

動揺度1: 歯が前後に動く場合(一定方向のみ)は動揺度1です。

動揺度2: 歯が前後だけでなく、左右にも動く場合は動揺度2です。

動揺度3: 歯が前後、左右に加えて上下にも動く場合は動揺度3です。

歯周病の進行度チェック

健康な歯肉は特徴的なコーラルピンク色を呈し、歯頸部に適度に密着した引き締まった形態を保っています。

正常な歯周ポケットの深さは約2mm程度であり、この浅い溝構造は口腔内の自浄作用を促進し、プラークの蓄積を最小限に抑えます。

また、健康な歯肉では毛細血管の健全性が保たれているため、通常の歯磨き時に出血が生じることはありません。

歯肉炎

歯肉炎になると、歯ぐきが赤くなり、歯磨きの際に出血することがあります。この段階では炎症は歯ぐきにとどまり、あごの骨には影響を及ぼしていません。

一方、歯周炎に進行すると、あごの骨にも影響を及ぼします。

歯周炎(軽度)

歯ぐきの炎症が進行すると、歯周ポケットが3~5ミリ程度に深くなります。歯周炎の軽度の段階では、歯周病菌が歯周組織を破壊し始め、あごの骨が溶け始める状態です。

この段階では自覚症状が少なく、見過ごしやすいこともあります。

歯周炎(中等度)

歯周病が進行すると、炎症が進み歯周ポケットが4~7ミリと深くなり、あごの骨がさらに溶けて歯が揺れることがあります。ポケットが深くなると、汚れが溜まりやすくなり、歯石が形成されてしまいます。

この段階では、歯ぐきの腫れや出血、膿が出ることがあり、また歯ぐきが下がることで冷たいものに対する知覚過敏が見られることもあります。

自覚症状が現れる時点で、歯周病はかなり進行していると言えます。進行した歯周病は治療に時間や費用がかかるため、早めの対処が重要です。

歯周炎(重度)

歯周ポケットが6ミリ以上に深くなり、歯がかなりぐらつく状態です。歯を支えている骨が大幅に失われ、このまま放置すると歯が抜け落ちる可能性もあります。この段階では、膿や出血が常にあり、口臭も強くなります。

また、歯がぐらつくことで咀嚼時に痛みが生じ、食事がストレスに感じることがあります。進行すると、上下に動く歯を維持するのが難しくなります。

歯周病の進行を止めるには?

歯周病治療は、歯周病菌の温床となるプラークや歯石の徹底的な除去にあります。

歯周ポケットの深化に伴い、通常の歯磨きでは到達困難な部位が増加し、専門的な介入が必要となります。

主要な治療法として、スケーリング・ルートプレーニングがあります。これは特殊な器具を用いて歯根表面の汚染物質を除去し、表面を滑沢にすることで、細菌の再付着を防ぐ処置です。

歯周ポケットが深い場合は、麻酔を施して汚れを除去することがあります。また、状況によっては、歯ぐきを切開してポケット内の汚れを確認しながら除去するフラップ手術を行うこともあります。

セルフメンテナンス法

歯周病治療後の継続的なケアは、治療効果の維持に不可欠です。

治療をすると、歯の面がツルツルしてプラークの付着が抑制されますが、その状態を保つには日々の適切な口腔ケアが重要です。

そのためには、毎日のセルフケアでしっかりと汚れを取り除くことが重要です。

セルフメンテナンスでは、歯磨きで汚れを取り除くことが基本ですが、汚れがつきやすい部分や歯ブラシだけでは届きにくい場所があるため、十分に汚れが落ちないこともあります。

そのため、デンタルフロスや歯間ブラシを併用して、歯と歯の間の汚れもしっかりと取り除きましょう。

また、自分に合った歯ブラシを選ぶことや、殺菌効果のあるマウスウォッシュを使用することもおすすめです。

プロフェッショナルケアとブラッシング指導

毎日歯磨きをしていても、磨きにくい部分や苦手な箇所には汚れが残りがちです。また、自分では気づかない磨き癖があるため、磨き残しが生じ、それが歯周病の原因となることも少なくありません。

そのため、定期的に歯科医院でプロのクリーニングを受けることが重要です。歯科医院では、汚れがどこに付着しているか、どのようにブラッシングすれば良いかの指導を受けることができます。この指導を参考にして、毎日のケアに役立てましょう。

さらに、歯科医院でのお口の状態のチェックにより、虫歯やその他の不具合、歯周病の進行状況を確認し、早期に対処することができます。お口のトラブルは早期に対応することで、治療期間が短く、痛みも少ないことが多いです。

歯周病治療後は、その安定した状態を維持し、進行を予防することが大切です。毎日のセルフケアに加えて、定期的なプロフェッショナルケアを行い、健康なお口の状態を保ちましょう。

この記事の監修者
この記事の監修者

浅井延彦

上荻歯科医院 院長

日本歯科大学を卒業し、上荻歯科医院の院長を務めている。豊富な知識と経験を持ち、日本口腔インプラント学会、顎咬合学会、日本メタルフリー歯科学会に所属し、最新の歯科医療技術の研鑽に励む。

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