浅井延彦
上荻歯科医院 院長
日本歯科大学を卒業し、上荻歯科医院の院長を務めている。豊富な知識と経験を持ち、日本口腔インプラント学会、顎咬合学会、日本メタルフリー歯科学会に所属し、最新の歯科医療技術の研鑽に励む。
歯が黒くなる原因の多くは虫歯です。まずは虫歯を疑うべきですが、他にも歯が黒くなる理由があります。以下に、主な原因を挙げます。
虫歯によって歯が黒くなっている場合、痛みが伴うことが多いです。虫歯の場合、黒い点や黒い筋、または歯の溝に沿って黒くなることがあります。黒い部分の形や大きさは様々で、一概には言えません。
歯の表面に見える黒い点が小さくても、虫歯が小さいとは限りません。歯の表面のエナメル質は非常に硬いですが、その内側の象牙質は柔らかいため、虫歯が進行するスピードが速いです。そのため、エナメル質にはわずかな黒ずみしか見えなくても、内部の象牙質は大きく虫歯菌に侵されている場合があります。
虫歯かな?と思ったら、早めに歯医者に行きましょう。基本的に、虫歯は自然に治ることはなく、放置すると進行するリスクが高まります。進行すると、神経の除去や抜歯のリスクが高くなるため、注意が必要です。放置することで症状が悪化してしまいます。
タバコのヤニやコーヒー、お茶などの飲食物によって、歯が着色することがあります。色の濃い食べ物や飲み物は、徐々に歯に色素を沈着させます。例えば、カレーやチョコレート、ケチャップ、ぶどう、ブルーベリーなどの食べ物や、赤ワイン、コーヒー、紅茶などの飲み物が代表的です。
これらを頻繁に摂取する人は、徐々に色素が沈着し、歯が黒く見えることがあります。特にタバコは歯が黒くなる大きな原因です。ヘビースモーカーや喫煙期間が長い人は、ヤニが歯に付着して黒ずむことが多いです。
詰め物や被せ物をした部分が黒くなっている場合、それらが原因である可能性が高いです。詰め物や被せ物は、長期間使用すると劣化し、黒く変色することがあります。これは避けられない現象です。それほど長期間使用していないのに黒くなっている場合は、表面に着色が付着しているだけかもしれません。
歯茎の近くに見える黒い点は、歯石によるものかもしれません。黒い部分がザラザラしていたり、他の部分より盛り上がっていたりすると、歯石である可能性が高いです。これは歯自体が黒いのではなく、歯に付着した黒い歯石のために歯が黒く見えるケースです。
歯石とは、プラーク(歯垢)が唾液の成分によって硬くなった塊のことです。通常の歯石はクリーム色をしていますが、歯茎の近くや歯周ポケットに付着する歯石は、血液の成分を含むため黒っぽい色をしています。特に歯周病にかかっている人は歯茎から出血することが多く、そのため歯石も黒くなりがちです。
また、歯周病が進行すると歯茎が痩せて歯根部分が露出し、歯茎に隠れていた黒い歯石が目立つようになることがあります。
虫歯が重症化して進行すると、歯の神経を除去する必要があります。また、歯根が破折して神経が死んでしまった場合も、神経を除去する処置が行われます。こうした処置をした歯は、いずれ黒ずんでしまいます。黒い点というよりも、歯全体が黒くなります。これは、神経を抜いたことで歯が生命力を失い、栄養が届かなくなるために起こる現象です。
歯が黒くなっている場合、その原因を見極めて適切な治療や処置を受けることが必要です。放置しても健康に問題がない場合もありますが、見た目が気になる場合は、一度歯科医院を受診することをお勧めします。
歯がむし歯で黒ずんでしまったら、すぐに歯医者さんに行きましょう。むし歯はC1からC5までの5段階に分けられますが、C1からC3までのむし歯なら、むし歯を取り除いて、その部分に詰め物や被せ物をすることで、歯の役割を取り戻すことができます。
むし歯治療で使う詰め物や被せ物には、保険でできるものと自分で払うものがあります。自然に見えるものがいいなら、自分で払うものがおすすめです。自分で払うものは、白くてきれいなセラミックを使うので、歯の見た目を美しくできます。
①着色除去力に優れた専用歯磨き粉を取り入れる
②歯医者で専門的な歯のクリーニング(PMTC)を行う
③ホワイトニングをする
対処法は大きく分けて3つあります。着色汚れやタバコのヤニ汚れは病気ではないため、過度に心配する必要はありません。しかし、見た目に影響を与えるため、気になる方は歯科医院で②のクリーニング(PMTC)を受けることをおすすめします。
PMTCとは、専門的な歯のクリーニングを指し、歯科衛生士が専用の機器を用いて口腔内の隅々までプラークや歯石、着色汚れを徹底的に除去します。この施術を受けることで、歯本来の白さを取り戻すことが可能です。それでも色の改善が気になる場合は、③のホワイトニングを行うことで、さらに白い歯に近づけることができます。
歯医者で診察を受けることをおすすめします。詰め物や被せ物の表面に着色が見られる場合は、クリーニングによって取り除くことが可能です。しかし、詰め物や被せ物の劣化による黒ずみがある場合は、新しいものに作り変える必要があります。
詰め物や被せ物の劣化は避けられないことですので、白さを取り戻すためには新しいものに交換するしかありません。また、詰め物や被せ物の周囲や下に虫歯ができて黒くなっている場合は、詰め物や被せ物を外して虫歯の治療を行う必要があります。
黒い歯石が付着している場合、歯石を除去することで見た目は改善されますが、それだけでは問題が解決しないことが多いです。特に、黒い歯石の原因が歯周病である場合は、まず歯周病の治療が最優先となります。
歯周病は、プラーク内の細菌によって歯茎などの歯周組織が炎症を起こす病気です。「歯茎から血が出るだけ」と軽視している方もいますが、その認識は見直す必要があります。
歯周病を放置すると、炎症が顎の骨にまで広がり、顎の骨が徐々に溶けていきます。顎の骨が溶けることで、歯を支える力が失われ、最終的には歯が抜け落ちることになります。
もし黒い歯石の原因が歯周病であれば、早急に治療を始め、歯周病の進行を食い止めることが非常に重要です。
過去のむし歯治療などで神経を除去した結果、歯が黒く見えることがありますが、これは病気ではありません。ただし、神経を除去した歯はトラブルを起こしやすいため、一度歯科医院で診てもらうことをおすすめします。
病気が隠れていない場合、そのままにしておいても問題ありませんが、黒い色が気になる場合や、特に前歯など目立つ場所の場合は、セラミック治療を検討することができます。セラミック治療では、歯を少し削り、その上に白い被せ物を施すことで見た目を改善します。
使用するセラミックは、周囲の歯の色や形に合わせて調整できるため、自然な仕上がりが実現します。なお、神経を除去したために黒くなった歯は、ホワイトニングでは白くすることができません。
歯が黒くなる主な原因と、それに対する治療法や対処法は以下の通りです。
・むし歯による黒ずみ → 歯医者で早急にむし歯治療を受ける
・着色汚れやタバコのヤニによる黒ずみ → PMTCで汚れを除去する
・黒い歯石による見た目の黒ずみ → 歯周病の可能性があるため、まずは歯周病検査を行う
・神経のない歯の黒ずみ → 白くしたい場合はセラミック治療を検討する
鏡を見て「歯が黒い」と感じたら、一度歯科医院で診察を受けることをおすすめします。根本的な原因を解消することで、本来の白い歯を取り戻すことができるでしょう。