COLUMNコラム

インプラントの変色の可能性と対処法

インプラントは、ブリッジや入れ歯に比べて審美性に優れているとされています。しかし、時間の経過とともに変色する可能性はあるのでしょうか?多くの人が、外科手術を経て埋め込んだインプラントをできるだけ長く美しい状態で保ちたいと考えていることでしょう。そこで今回は、インプラントの変色リスクと、その対処法について詳しくご紹介します。

インプラントの構造の復習

まずは、インプラントの構造について確認しましょう。インプラントは、人工歯根であるインプラント体、人工歯となる上部構造、そしてそれらを連結するアバットメントの3つの部分で構成されています。

インプラントは変色するのか?

天然歯は、食物残渣やプラーク、歯石、食品の色素によって変色します。これは、歯の表面に形成されるペリクルと呼ばれる粘着性の薄い膜に汚れや色素が沈着することが原因です。さらに、加齢、先天的要因、薬品、神経の喪失なども変色の要因となります。

インプラントも同様に、上部構造である人工歯(補綴物)が変色するリスクがあります。インプラントの変色は、主にこの上部構造の素材によって左右されます。インプラントの上部構造に使用される主な素材は以下の通りです。

ジルコニア

ジルコニアは「人工ダイヤモンド」とも称される素材です。その優れた耐久性から、スペースシャトルの外壁や人工関節にも使用されています。また、審美性にも非常に優れており、天然歯と見分けがつかないほどの美しさを持ちます。さらに、ジルコニアは汚れが付きにくく、変色しにくい素材としても知られています。

メタルボンド

金属のフレームにセラミックを焼き付けた補綴物です。セラミックは陶材であり、衝撃に対してはややデリケートな面がありますが、汚れが付きにくく、変色しにくい特性を持っています。
ただし、人工歯自体は変色しにくいものの、メタルボンドと接する歯肉の辺縁部分では、経年劣化により金属イオンが流出し、黒ずんでしまう可能性があります。

ハイブリッド前装冠

ハイブリッド前装冠は、金属のフレームにセラミックとレジンを混合したハイブリッドセラミックを焼き付けた補綴物です。この補綴物は、レジンを含むため、経年劣化とともに徐々に変色しやすいことが知られています。

銀歯

銀歯は一般的な補綴物で、金銀パラジウム合金で作られています。金銀パラジウム合金は、金、銀、銅、亜鉛、パラジウム、すず、イリジウムなどの金属を混合した合金です。審美性に劣るうえ、経年劣化により金属イオンが流出し、周囲の歯肉が黒く変色するリスクがあります。また、経年によってすり減ることで咬み合わせに影響が出ることもあります。

インプラントの上部構造には、一般的に保険適用外の人工歯(補綴物)が使われることが多いです。ご自身が装着している人工歯の素材の特徴を理解し、変色などの問題があれば歯科医院で相談するようにしましょう。

インプラントの変色を防ぐ方法

インプラントの上部構造である人工歯(補綴物)の変色を防ぐためには、定期的なメンテナンスを受け、歯ブラシでは取り除けない汚れや色素沈着を除去することが重要です。また、日常のセルフケアも変色防止に役立ちます。

色素沈着しやすい食品を摂取した際は、速やかに歯を磨きましょう。歯磨き粉には、色素沈着を防ぐ成分として「シリカ」や「ポリリン酸」が配合されたものがあり、これらを使用すると効果的です。

外出中や歯磨きが難しい場合でも、軽く水で口をゆすぐだけで効果があります。また、唾液には口内を洗浄する役割があるため、唾液の分泌を促すためにキシリトールガムを噛むと良いでしょう。

【インプラントの変色を防ぐ対策】

・食後の歯磨き
・水で口をゆすぐ
・色素沈着を防ぐ成分(シリカやポリリン酸)を含む歯磨き粉の使用
・着色しやすい飲食物の摂取時間を減らす
・歯科医院での定期的なクリーニング
・唾液の分泌を促すためにガムを噛む

色素沈着の原因と影響を受けやすい食品

インプラントの上部構造である人工歯(補綴物)は、摂取する食品や嗜好品の色素が沈着することで変色することがあります。以下は、色素沈着しやすい食品や嗜好品の一例です。

【色素沈着しやすい食べ物・嗜好品】

・チョコレート
・カレー
・ケチャップ
・イチゴジャム
・醤油
・ソース
・緑茶
・ウーロン茶
・紅茶
・コーヒー
・赤ワイン
・タバコ

特にコーヒーやタバコといった嗜好品は、習慣的に口にするため、摂取頻度が高いほど色素の沈着が進みやすくなります。

また、色素沈着による変色は人工歯(補綴物)だけでなく、天然歯にも共通する問題ですので、天然歯の色素沈着にも注意が必要です。

インプラント上部構造の交換

インプラントの上部構造である人工歯(補綴物)の変色が気になる場合は、人工歯(補綴物)の交換を検討することも一つの方法です。インプラントメーカーによって仕様は異なりますが、多くの場合、インプラントの上部構造である人工歯(補綴物)を交換することが可能です。

「上部構造の交換にあたって、インプラント全体を再埋入する必要がある」と考えがちですが、実際には人工歯根(インプラント体)はそのままにして、上部構造のみを新しく作成することが可能です。また、新しい人工歯(補綴物)を製作する際には、ジルコニアなどの変色しにくい素材を選ぶことをおすすめします。

以上、インプラントの変色について詳しくご紹介しました。インプラントの変色は装着している人工歯(補綴物)の素材によっても影響されます。変色を防ぐためには、定期的なメンテナンスと歯のクリーニングが有効です。また、毎日のセルフケアとして、色素沈着を防ぐ成分が配合された歯磨き粉を使用するのも効果的です。インプラントについてのお悩みがある場合は、どうぞお気軽にご相談ください。

Back to Top